●クーリングオフ妨害
クーリングオフとは、契約してから一定期間の間、消費者が無条件で契約を取消せる権利です。法律上では申込みの撤回又は解除と言います。
クーリングオフが認められている販売方法は、訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引(マルチ商法、ネットワークビジネス、MLM)・特定継続的役務提供(エステサロン、英会話スクール等)・業務提供誘引販売取引(内職商法等)です。
クーリングオフは、不意打ちの勧誘や比較対照が無い状態で契約してしまった人への救済措置と捉えても良いでしょう。契約してしまってから、冷静になって(クーリング)考えてみたら、やっぱり必要なものではなかったので解約(オフ)するという事です。
クーリングオフはその権利を行使できる期間が決まっています。訪問販売・電話勧誘販売では契約した日から(正確にはクーリングオフについての説明が書かれた書面を受け取った日から)8日間です。その期間なら、消費者は一方的にクーリングオフを業者に申し出る事ができ、業者はこれを拒む事が出来ません。クーリングオフをした場合、業者・消費者共に契約前の状態に戻す義務が生じ業者は支払われた代金の返金、消費者は受け取った商品の返還をそれぞれしなければなりません。
自己啓発セミナーの場合は形のある商品ではない為、返還の義務はありません。また、クーリングオフ期間中に受講してしまって(役務が提供されている状態)いる場合でも、業者は返金しなければいけません。(特定商取引に関する法律第九条第五項、同第六項)
5 役務提供事業者又は指定権利の販売業者は、役務提供契約又は指定権利の売買契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該役務提供契約に基づき役務が提供され又は当該権利の行使により施設が利用され若しくは役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭又は当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない。
6 役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。 |
○具体的にクーリングオフ妨害って?
クーリングオフとはどのようなものかはわかったと思います。では、クーリングオフ妨害とはどのようなものなのか説明しましょう。
クーリングオフは書面で申し込むの決まりです。しかし、なかには業者に電話して申し込む人もいます。その際、「当社の商品はクーリングオフできません」とか「もう一度考え直してみませんか」等とクーリングオフを思い留まらせようとする行為がクーリングオフ妨害になります。法律で決まっている事でもありますが、記録を残す、業者に言いくるめられないように、という意味でもクーリングオフは必ず書面で行いましょう。
自己啓発セミナー会社のなかには、「訪問販売ではないのでクーリングオフは受けられない」と堂々と言い放ったところもあります。これも立派なクーリングオフ妨害です。
次のような場合もクーリングオフ妨害になります。
○ケース1
退去妨害を受けて契約してしまった花子さんは、やっぱりセミナーは必要ないと思いクーリングオフする事に決めました。契約書にも申込みから8日間はクーリングオフが出来ると書いてあります。そこで、勧誘してきた菊子さんにクーリングオフをしたいと伝えました。
花「菊子ちゃん、この前の申し込んだセミナーだけど、やっぱり受けるのやめるよ」
菊「なんで?この前やるって自分で決めたじゃん」
花「うん。でも、よく考えてみて私には必要ないと思うから・・・」
菊「そうやって、また逃げるんだ。紹介した私の立場も考えてよ」
花「ごめんね。でも、やっぱり受けない」
菊「冷たいね。セミナー受けないなら絶好だからね」
花「え!そんな・・・。じゃあ、受けるよ」
菊「うん。頑張ってね」
花子さんは、菊子さんに押し切られる形でクーリングオフをする事を諦めてしまいました。
実は、これまで説明してきた「不実の告知・断定的判断の提供」「威迫・困惑」をクーリングオフの申込みやクーリングオフをしようと相談してきた際にやると、クーリングオフ妨害になりのです。各項で紹介した条文には「又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除」という文が入っています。契約を結ぶ時も撤回する時も、やっていけない事は同じ、という事ですね。
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