消費者問題としての自己啓発セミナー
     

自己啓発セミナー契約・勧誘トラブル
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Since 2005/08/12 更新:2006/5/21(履歴
作成:mamma


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●自己啓発セミナー勧誘は訪問販売

 このタイトルを見て「?」と思う人は多いでしょう。住居等に訪ねて(訪問)モノを売る(販売)のだけが訪問販売ではないのです。
  また、自己啓発セミナーの受講生の方は「俺達がやっているのは勧誘でも販売でもない。ただセミナーを紹介しているだけだ」と思っているかもしれません。いやいや、あなた達がやっている事は立派な勧誘・販売なのです。
  それをこの項で説明しましょう。

○訪問販売とは
  訪問販売と聞いて真っ先に思い浮かべるのが、家に来て何らかのモノを売る行為でしょう。もちろん、それも訪問販売なのですが、法律での訪問販売の定義はもっと広いものです。訪問販売の定義は「特定商取引に関する法律(特商法)」に記されています。

第二条  この章において「訪問販売」とは、次に掲げるものをいう。
一  販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の経済産業省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う指定商品若しくは指定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う指定役務の提供
二  販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う指定商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う指定役務の提供

 特商法第二条第一項です。では、説明していきましょう。
  ・・・と、その前に条文の読み方のお約束の説明からしますね。
  条文は以下のような構成になっています。

第○条 第一項 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
        │ ├第一号 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
        │ ├第二号 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
        │    ・
        │    ・
        │ └第○号 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
        ├第二項 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
        │ ├第一号 △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
              ・
              ・

 階層が下がるにつれて細かい(詳しい)事が書かれています。実際の条文では、項は算用数字で号は漢数字で項又は号番号が振られます。また、第一項の項番号は省略されます。特商法第二条は今回引用した部分の後に第二項(電話勧誘販売の定義)があります。

 では、条文の説明をします。
  「役務(えきむ)」とは、他人の為に行う労務やサービスの事です。今回の説明の場合は消費者に提供するセミナーになります。
 「指定商品若しくは指定権利の販売又は役務 」とは、「特定商取引に関する法律施行令」で指定されているものです。自己啓発セミナーは指定役務である「技芸または知識の教授」になります。自己啓発セミナーは消費者にとってセミナー会社から提供される指定役務であり、その販売・勧誘方法は特商法で厳しく制限を受けるものとなります。
  特商法で定義する訪問販売とはどのようなモノかを見ていきましょう。
  法第二条第一項第一号では、営業所等以外の場所でモノの販売や有償の役務を提供する契約を結ぶ行為を訪問販売としています。
  法第二条第一項第二号では、営業所等以外の場所で呼び止めたりして営業所等に同行させたり、営業所等に呼び出してモノの販売や有償の役務を提供する契約を結ぶ行為を訪問販売としています。
  つまり、住居や職場に訪ねてきて販売や契約をする行為の他にも、営業所等以外の場所(喫茶店とか街中とか)に呼び出して販売や契約を結ぶ行為、キャッチセールスのように街中で勧誘して営業所等に連れて行ったり、電話や手紙等で営業所等に呼び出して販売や契約を結ぶ行為は全て訪問販売になります。

○では、自己啓発セミナーの勧誘は?
  自己啓発セミナーは先に説明したように指定役務であるので、勧誘において訪問販売の定義に沿う勧誘をした場合は訪問販売になります。
  セミナー関係者が「エンロールは勧誘ではない」と言っても、法律上は訪問販売ですので勧誘になります。自己啓発セミナーのプログラムが出来た当時は特商法はもちろん、特商法の前の法律である「訪問販売に関する法律(訪問販売法)」も無かったので「勧誘ではない」という言い訳が通用したかもしれませんが、現在は特商法で定義されいます。
  また、経済産業省の見解では、勧誘行為に対する対価として金銭をセミナー会社が勧誘をした受講生に払った場合は、その金銭は特定利益とみなされて連鎖販売取引(マルチ商法・ネットワークビジネス・MLM)と判断される事もあり得るそうです。金銭ではなくブランド物のバッグ等の品物を与えた場合は、判断がつかないとも言っていました。

○訪問販売の禁止行為
  訪問販売を行う上で、やってはいけない事・やらなければいけない事がいくつかあります。

やってはいけない事
行為
説明
罰則
不実の告知 事実ではない事を事実であるかのように伝える行為(特商法・消費者契約法) 2年以下の懲役、又は300万円以下の罰金

断定的判断の提供

契約する判断に影響を及ぼす事柄について不確実な事を確実であるように伝える行為(特商法・消費者契約法) 2年以下の懲役、又は300万円以下の罰金
ブラインド勧誘 販売や契約を結ぶ目的を隠して呼び出したり呼び止めたり訪問したりする行為(特商法・消費者契約法)  
威迫・困惑

脅したり困らせたり不安にさせて契約を結ばせる行為(特商法・消費者契約法)

2年以下の懲役、又は300万円以下の罰金
不退去・
退去妨害
訪問してきた業者に対して帰って欲しいという意思表示をしても帰らない行為。自宅や職場以外の場所で勧誘されている際、帰りたい意思表示をしているのに帰らせない行為(消費者契約法)  
クーリングオフ妨害 クーリングオフ期間中にも関わらず消費者からの契約撤回の申し出を断る行為(特商法) 2年以下の懲役、又は300万円以下の罰金

 これらの事をされた場合、契約解除を求める事が出来ます。

やらなければいけない事
行為
説明
罰則
氏名等の明示 勧誘する際には必ず勧誘する者の名前や業者名を明らかにする(特商法・消費者契約法)  
書面の交付 契約を申し込まれた際は、商品・役務の値段、支払い時期、引渡し・提供時期、クーリングオフについて書かれた書面を消費者に渡す(特商法) 100万円以下の罰金

 これらの事がされなかった場合も契約解除を求める事が出来ます。また、クーリングオフはクーリングオフについて書かれた書面を渡された時点が起算日となります。したがって、クーリングオフについて書かれた書面を貰っていない場合、いつでもクーリングオフが出来ます。

 こうやって書き出してみると、やってはいけない事もやらなければいけない事も実に当たり前の事です。契約とか販売とかと、堅苦しく難しく考えるから分からなくなるかもしれませんが、単純に「約束」だと考えてみてください。普段、皆さんが日常生活でする様々な約束です。嘘をついたり強引な方法で約束させる事は良くない事ですよね。法律には、その事を改めて書いてあるのです。なんでわざわざ当たり前の事を書くのか、という疑問もあるかと思います。それは、その当たり前の事をやらない訪問販売業者がいるからなのです。

○悪徳商法?
  自己啓発セミナーの勧誘というのは、大抵、業者のセールスマン等からではなく縁故知人友人等から受けるものです。その為、訪問販売の法律上の定義を知っていても、勧誘される側は、今されていることが訪問販売による勧誘だとは認識しづらい部分があります。しかし、前述したように、自己啓発セミナーの勧誘行為は紛れも無い訪問販売です。
  勧誘する側も、訪問販売をしているという意識を持っていないことがほとんどです。勧誘しているという認識を持っている事はありますが、セミナープログラムでは、あくまでも紹介であるといっていますので、訪問販売をしているという認識には至らないのです。

  その為、違法な勧誘活動が当たり前のようになされます。よくあるのが、ブラインド勧誘と不実の告知・断定的判断の提供です。
  はじめから「セミナーを紹介したいから会おう」なんて言えば断られると思っているからでしょうが、「ちょっと話したい事があるから出てこないか?」等と勧誘目的を隠して呼び出します。
  セミナーの内容については「受講してない人に言ってはいけない」というセミナー独自のルールがある為、勧誘される側に伝える事が出来ません。その為、セミナーの良さを伝えようと、「勧誘活動なんかしない」「必ず成長できる」「どこどこの企業も社員研修で採用している」等と誇大な表現や嘘を言って勧誘します。
  これらが、勧誘者の判断だけで行われているのではなく、セミナー会社側がセミナー内でそうやるように指導しているのです。
  これらの行為をするものを、世間では悪徳商法、悪徳企業等と呼びます。